足のアーチが崩れるとなぜ膝に痛みが出るのか?
足病学の視点から解説する膝痛の根本原因
膝の痛みの原因は膝そのものではなく、実は足にあることが多いのをご存知でしょうか?
特に「足のアーチ構造の崩れ」は、膝の痛みや変形性膝関節症の大きな原因となります。このページでは、足と膝の意外な関係性について、足病学の観点から詳しく解説します。
膝の痛みでお悩みの方は、ぜひ足元から見直すきっかけにしてください。
足のアーチ構造とは
人間の足には、3つの主要なアーチ構造があります:
- 内側縦アーチ:足の内側に沿って走る最も大きなアーチ
- 外側縦アーチ:足の外側に沿って走るやや平坦なアーチ
- 横アーチ:足の前部を横切るアーチ
これらのアーチは足の骨、靭帯、筋肉によって形成され、衝撃吸収、体重支持、歩行の推進力などの重要な機能を担っています。

足の3つの主要アーチ構造
アーチが崩れた足の実例

赤丸部分:内側縦アーチの低下(扁平足)が見られる
写真の赤丸で示された部分に注目してください。健康な足であれば、この部分は床から浮いているはずですが、アーチが崩れると地面に接触してしまいます。
これは「扁平足(へんぺいそく)」と呼ばれる状態で、内側縦アーチが低下している典型例です。
このようなアーチの崩れは、単なる足の問題ではなく、膝や腰など上部の関節に大きな影響を及ぼします。
アーチ崩れがなぜ膝に影響するのか
1. 過回内(かかいない)
足のアーチが崩れると、足が内側に過度に倒れる「過回内」という状態になります。この過回内により、足首から膝までの下肢全体が内側に回転し、膝関節に対して異常な力がかかります。
2. 膝関節の不安定化
本来まっすぐに伝わるべき体重が、足のアーチ崩れにより捻れの力が伝わるようになります。これにより膝関節の内側に過度な圧力がかかり、軟骨のすり減りや痛みを引き起こします。
3. 衝撃吸収機能の低下
足のアーチには衝撃を吸収する重要な役割があります。アーチが崩れると、歩行や走行時の衝撃が直接膝に伝わり、膝関節への負担が増大します。
4. 歩き方の変化による膝への負担
足のアーチが崩れると、歩く際のつま先の蹴り出しが弱くなります。これは「ウィンドラス機構」と呼ばれる足の自然なバネの働きが失われるためです。
結果として歩幅が小さくなり、歩行時に膝を過度に使うようになります。この誤った動きが膝関節に余計な負担をかけ、時間とともに痛みの原因となります。

足のアーチ崩れが膝関節に与える影響
アーチ崩れが引き起こす膝の問題
変形性膝関節症
足のアーチ崩れにより膝の内側に過度な圧力がかかると、軟骨がすり減り、変形性膝関節症の原因となります。特に内側の関節裂隙の狭小化が特徴的です。
ランナー膝(腸脛靭帯炎)
足のアーチ崩れは下肢全体のアライメントを崩し、膝の外側を走る腸脛靭帯に過度な摩擦を生じさせ、炎症を引き起こします。
シンスプリント
足のアーチ崩れは、すね内側の痛みであるシンスプリントの主要原因のひとつです。アーチ低下により衝撃吸収能力が失われ、脛骨に過度な負担がかかります。アーチサポートはこの症状の効果的な改善策となります。
足のアーチ崩れを改善する方法
1. オーダーメイドインソール
足のアーチ崩れを根本から改善するには、医療用オーダーメイドインソールが効果的です。当院で採用している「フォームソティックス・メディカル」は、一人ひとりの足に合わせて作製され、アーチを適切にサポートします。

2. 足のアーチ強化エクササイズ
足の内在筋を強化するエクササイズも効果的です。以下のような簡単なエクササイズを日常に取り入れることで、アーチ機能を回復させることができます:
- タオルギャザー:床に広げたタオルを足の指で引き寄せるエクササイズです。足の内在筋(特に短趾屈筋)を直接強化し、アーチを能動的に支える力を高めます。
- カーフレイズ:かかとを上下させる動作で、ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)を強化します。壁や椅子につかまり、かかとを上げてつま先立ちになり、ゆっくり下ろすを繰り返します。このエクササイズは間接的に足底腱膜の機能を高め、歩行時の推進力を向上させます。
- 足底腱膜ストレッチ:ゴルフボールやテニスボール・凍らせたペットボトルなどの上で足の裏をゆっくりと転がします。特にアーチ部分とかかとの付け根を重点的に行いましょう。強い緊張状態にある足底腱膜をリリースし、適切な張力を回復させます。
3. 適切な靴選び
足のアーチをサポートする構造を持った靴を選ぶことも重要です。特に以下のポイントを意識しましょう:
- 硬めのカウンター(踵部分)
- 適度なアーチサポート
- ねじれに対する安定性
- 詳しくはこちら↓
- 膝痛予防のための正しい靴選び|3つの大事なポイント
まとめ:膝の痛みは足から見直す
このページでご紹介したように、膝の痛みの多くは足のアーチ崩れに起因しています。
膝の痛みでお悩みの方は、ぜひ足元から見直してみてください。特に以下のサインがある方は、足のアーチ崩れが原因の可能性が高いと言えます:
- 膝の内側に痛みがある
- 長時間立ったり歩いたりすると膝が痛む
- 靴の内側が特に摩耗している
- 平らな足跡がつく(土踏まずの跡がつかない)
- O脚(または膝がX脚)がある
当院では足病学に基づいた詳細な足の検査と評価を行い、あなたの膝の痛みの根本原因を突き止めます。足のアーチを適切にサポートすることで、膝への負担を軽減し、痛みのない生活を取り戻しましょう。
院長 関山 宏より
「膝の痛みでお悩みの多くの患者さんが、実は足に原因があることを知らずに苦しんでいます。足病学の視点から膝の痛みを見直すことで、多くの方が痛みから解放される道があります。ぜひ一度、足と膝の関係を専門的に診させてください。」